私が小・中学生だった1960年～70年代は日本の高度成長時代で、国民の食生活での砂糖の消費量が飛躍的に伸びていく中、
「虫歯・歯周病の予防」という考えはまだまだ少なかった時代背景がありました。
あの遠い昔の夏休み。腕がたいへん良いと評判の隣町の歯医者さん。
住吉大社の近くの「高燈籠」の石畳の路地裏にその入口があり、引き戸を空けて一歩中に入ると1階部分に第一・第二待合室があり、
畳み敷きのその部屋にはテレビが一台と壁掛け扇風機が二台あるだけで、そんな中多くの患者さんで溢れかえっていました。
クーラーがまだ無かったムンムンする待合室の扇風機の羽根の風切り音の中、

私は自分も含めて世の中にはこんなにも歯で悩みを抱えている人々が多いことにビックリしていました。
高校に入り進路を考える頃になっても、このことが頭から離れられずにいました。
実家の薬局を継ぐという選択肢もあったのですが、歯医者という仕事に非常に魅せられている自分に気づくと、
居ても立ってもおられずあの尊敬する通い詰めていた名医「横路先生」（路地裏にある歯医者さんが本当に「横路歯科」というお名前です）に相談したところ、
「歯医者は肉体的に精神的にたいへんな仕事である。しかし、患者さんから苦労以上の喜びを与えられる職業である。」

とおっしゃられた言葉が私の運命を決めました。
それから40年以上経っても「横路先生」のお言葉には真実が詰まっていることを日々の診療のなかで実感しております。